乗客が新型コロナウイルスに感染したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で9日、新たに6人の感染が判明した。香港人の男性乗客(80)の感染が1日に発覚したことを受け、3日に体調不良を自己申告した273人の検体を調べ、判明した感染者は8日までに64人だったが、これで船内での感染者は70人となった。

船内で飲む真水の精製などの作業のため、8日に横浜・大黒ふ頭から外海に出た船は9日午前、同ふ頭に再接岸した。8日の段階で、新たに100人程度が体調不良を訴えていたが、乗船している埼玉県の60代男性によると、外海に出た後、海上にヘリコプターが来たという。男性は「検体を取っていったそうで、新たな6人はその中から出たのでは」と語った。

5日朝に全乗客が客室での待機となって5日目となったが、その間、客室の掃除もなく排気口からは黒いほこりのようなものが出始めたという。また、時間を持て余した乗客が、船に近づくカモメにエサを与えるケースも出始めた。船側は船内アナウンスで野生動物へのエサやりを禁じた。

先行きが見えない中、男性は最短での上陸日とされる19日を目標にカレンダーを手作りした。「見て、あと何日で出られると考えていますが、下船日が延びるかも知れないと覚悟もしています」。船側は、日本時間10日に開催される米アカデミー賞授賞式をテレビで視聴できるよう手配するなど懸命だが、乗客の忍耐は限界に達しつつある。

この日、加藤勝信厚労省はテレビ番組に出演し、乗客乗員全員への検体検査を検討していくと話した。