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Friday, November 5, 2021

またしても最終局を制して防衛した囲碁・井山裕太名人 会見一問一答 - スポーツ報知

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 囲碁の井山裕太名人(32)=棋聖、本因坊、碁聖=に一力遼天元(24)が挑戦していた第46期名人戦七番勝負の最終第7局が5日、静岡県河津町で前日から打ち継がれ、井山名人が129手で黒番中押し勝ちしてシリーズ4勝3敗でタイトルを防衛、2連覇を達成した。

 今年は本因坊戦で芝野虎丸王座を相手に1勝3敗のカド番から逆転防衛。一力碁聖(当時)に挑戦した碁聖戦五番勝負でも1勝2敗から逆転奪取。井山名人は再び土俵際で強さを見せた。

 会見での一問一答は以下の通り。

 ―フルセットの激戦でした。シリーズを振り返っての感想を。

 「フルセットが本当に最近ずっと続いていて、内容的にもギリギリの戦いだったと思います。シリーズを通して自分の今の能力は出し切れたと思いますけど、負けた碁は特に反省点の多い負け方になることが多かったので、まだまだ力不足と感じました」

 ―局後に話していた「反省点、課題」とは具体的にどのような?

 「このシリーズで言うと、特に第3局の負け方が、負けたことよりも自分としてはかなりまずかったです。少し優勢になったと思った局面から後退を続けて負けるような負け方で、このような碁を打っていてはいけないなと。その後の対局については勝ち負けよりも、そういう負け方はしたくないなという思いで打っていました」

 ―一力さんの成長、変化は?

 「もう実力は誰もが認めるところですけど、対局を重ねるごとに進化されている印象を受けましたし、名人戦だけでなく、ここ数年はずっと星の上でも競っているので、やはり相対的に見ていちばん大変な相手かなと思います」

 ―フルセットの勝負を制している理由は。

 「フルセットの勝ちが続いていることは、たまたまという気もしています。スコアの上でも内容的にも圧倒できているような番勝負ではないことが続いてますので、一力さんをはじめ若い棋士たちの成長をすごく感じています」

 ―最終局を迎えても余裕のようなものすら感じました。メンタル的に成長された部分はあるんでしょうか?

 「いや、全く余裕はないです(笑)。今年のフルセットは全て先に追い込まれてからの展開ですので、本当にずっと苦しい勝負が続いている感じです。そういう状況をかなり経験して少しずつ慣れてきたところはあるのかなというのと、彼に追い込まれたのも、自分が追い込んだ方も経験はありますけど、追い込んだ方も結構大変というか、早く決めようといったような気持ちが出てくるとかなりマイナスに働くことが多いので、どちらの立場もやはり難しいんです。追い込まれた状況でも一局一局、精一杯やっていけば確率的にはチャンスがあると、少し考え方が変わってきたところもあるのかなと思います」

 ―先日の碁聖就位式でも「もう過去も未来も考えない」と。

 「自分のベストを尽くすことがいちばん勝利に近いと思っているので、目の前のひとつひとつ、一手一手に全力を尽くす姿勢は大事なのかなと思います」

 ―芝野虎丸王座に挑戦している王座戦が進行中で、年明けからは棋聖戦で一力さんの挑戦を受ける。世界戦も含めた今後について。

 「年内は王座戦が最後のタイトル戦になりますのでそこに全力を尽くすことになりますけど、芝野さん、一力さん、許家元さん、その下の世代もやはり強力なので、これからもしばらくは勝ったり負けたりを繰り返していくような展開になるのが普通かなと思います。でも、あまり目の前の結果を意識しすぎず、一喜一憂しすぎずに自分が進歩しているか、前進しているか、ということだけ考えてやっていけたらと思います」

 ―3度目の七冠という期待も聞こえ始めている。

 「いや、十段戦も負けてしまったのでしばらくは(チャンスが)無い状態なので、現実的にはなかなか考えられないですけど、これだけ強い棋士たちが台頭してきている中で、ある程度のタイトルの数を持ち続けられているのは自分としても良く出来ている方かなと思っています」

 ―改めて、碁聖戦を含めて一力さんと12番を戦って。

 「総合的に進歩されてるのは間違いないと思いますし、たとえこちらの形勢が良くなっても簡単に土俵を割らない粘り強さはここ数年でより感じるようになりました。私との対局だけじゃなく、他の対局を見ていても、良くなった後はそのまま逃げ切るし、ちょっと悪くなっても形勢不明の局面、勝負形に持ち込む戦術や技術、いろんな面で成長されていると感じます。全体を通していちばん安定したパフォーマンスをされているので、いろんなところで当たるのは必然かなと思います」

 ―名人8期で名誉名人に残り2期になりました。連覇ではなく通算で取った方はまだいませんが、名誉称号について。

 「自分にとって名人は初めて獲得させていただいたタイトルですし、すごく思い入れの深い棋戦なんですけど、長期の連覇が出来ていないところはあるので、何度か失った時はもう(名誉名人は)厳しいかなと思ったんですけど少しずつまたチャンスが出てきているところはあるので、大変ですけど目指して頑張りたいなと思います」

 ―碁聖戦後に「追い込まれて迷わなくなることもある」と仰った。今シリーズはどうだったのでしょう。 「第3局の負け方が自分としては良くなかったという話をしましたけど、逆に第5局の負けはそんなにチャンスらしいチャンスも作れずという負け方で一力さんの強さと充実ぶりを感じたので、かなり大変かなと正直思ったんですけど、自分のパフォーマンスのレベルを少しでも上げていけたらチャンスはあるかなと思って、勝ち負けのことは意識せず6局目以降は臨めたと思います」

 ―ここまでのところで言うと、今年はどんな年だったのでしょう。

 「これだけフルセットが立て続けになったことは今までなかったので、本当に大変でした。1つのシリーズが終わるまで本当の意味で気が休まることはないので、そういう期間が作れなかったことはありますけど、逆に良い緊張感を持ってずっと過ごせた面もあるかなと思いますので、この経験を次に活かしていけたらと思います」

 ―過去、名人戦の最終局で落としていたのは黒番でした。意識したところはあったのでしょうか?

 「第6局が終わった後、新聞記事を読ませていただいて、そうなんだと思ったので(実際に黒番になって)読まなければよかったと思ったんですけど(一同笑)、振り返ると名人戦の最終局ではどこか思うように打てていないところはあった気がするので、今日ひとつ結果を出せてよかったんですけど、とにかく納得のいく碁が打てればという意識だけでした」

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