なんらかの原因があるから「煽られても仕方がない」というのはイジメの構図そのもの
2019年、社会問題となったのが「あおり運転」です。さらに単に車間を詰めるような乱暴な運転として認識するのではなく、暴力的な「ロードレイジ」として、より重大な犯罪行為として認知すべきという意見もあります。単なる車間不保持とロードレイジを切り分けて考えるべきタイミングになっているともいえます。
それはともかく、いまだに「煽られるほうにも原因がある」という見方をしているドライバーは少なくないようです。たしかに高速道路の追い越し車線をゆっくり走って、渋滞を引き起こすような行為は、それ自体が道路交通法違反ですし、褒められたものではないのは当然です。だからといって他のドライバーが私刑的に「あおり運転」をして恐い思いをさせるということが認められるわけではありませんし、私刑的な行為もまた犯罪的といえます。
一般道においてはコンパクトカーや女性ドライバーなどが「あおり運転」の被害を受けるケースが多いという調査結果もあります。多くのドライバーが「軽自動車に乗っていると煽られやすい」と感じているのだとしたら、運転に原因があるのではなく、単に弱者をイジメているのと変わりません。これは、いわゆる「イジメ」の構図とまったく同じです。被害者の特性を、あたかも落ち度のように捉えてイジメ行為を正当化することが許されないのは、いまや社会的なコンセンサスといえます。
つまり、「煽られるほうにも原因がある」という主張は社会的に認められないといえますし、そうした主張をしているドライバーは、表立って批判されなくとも、良識派からすると白眼視される存在になっているということは意識したほうがいいでしょう。暴力行為を肯定するということが許される時代ではありません。その意味でも「あおり運転」ではなく「ロードレイジ」として暴力的な行為であることを明確にする必要があるというわけです。
「あおり運転」の社会問題化に伴い、ドライブレコーダーの販売も伸びているといいますが、トラブルの解消に利用するのはいいとして、その動画をネットなどに公開するのも同様に私刑的な行為といえるでしょう。あおり運転の被害者だから何をしても許されるというわけではありません。
まして、わざとゆっくり走って「あおり運転」をするように仕向けるというのは、円滑の交通を妨げる行為であり、すべてのドライバーに課されている『安全運転の義務』に違反するものといえます。正義の主張も行き過ぎると社会通念上はNGとなります。
年末年始、クルマに乗る機会が増えると「あおり運転」的な状況に出会うことが増えるでしょう。一定数、暴力的なドライバーがいるのは仕方がないといえますから、社会問題化したからといって「あおり運転」が消えるとは思えません。まして不慣れなドライバーが増えると、「あおり運転」のきっかけが増えるといえるからです。
とにかく私刑的な行為というのは、自らに正義があると主張したとしても、法治国家では許されざる行為であり、真の正義ではありません。スマートなドライバーであれば「ロードレイジ」につながりそうな状況を上手にスルーすることを意識して、気持ちよく安全なドライブを心がけたいものです。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート
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December 30, 2019 at 02:38PM
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