東京都で新型コロナウィルスの感染拡大が懸念されていますが、既に大規模な感染が起こっている米ニューヨークでは何が起こっているのでしょうか。
まず、アメリカの現状ですが、3月29日時点で全米の感染者数は約14万人とイタリアや中国を凌いでおり、死者は2,500人近くに上っています。感染の中心となっているニューヨーク州では、感染者約6万人、死者約千人と全米の半数近くを占めており、その半数以上がニューヨーク市内で発生しています。
感染経緯
CDCによると、米国で最初に感染が確認されたのは1月21日、ワシントン州で中国の武漢からの帰国者の感染でした。
その後、他州でも武漢からの帰国者の感染を複数確認、同月末には国内の人から人への感染が確認され、2月13日までに感染者数は15人に増えました。
同月28日に経路不明な感染が4件確認されてから急速に感染数が増え始め、3月3日に60人、同月9日には500人を超えました。
ニューヨーク州では、3月1日にイランへの渡航歴がある人の感染が最初に市内で確認され、3日には2例目となる経路不明の感染者1名を郊外で確認。その後、その人物と接触のあった人の間で感染が広まり、翌4日に11人、5日に22人、6日に44人と倍増し、17日には1,000人を超え、29日には1日の感染者数が約7千人、死者数は200人以上となっています。
政府の対策
同州では現在、州内の全市民に対して外出禁止令が出されています。
3月22日以降、市民は食材の買い出し等不可欠な場合を除き自宅で待機し、食料品店やガソリンスタンド、病院、警察等、生活に不可欠な業種を除くすべての労働者に在宅勤務が義務付けられています。公立学校も閉鎖しています。
レストランやバーは持ち帰りや宅配に限り営業を認められていますが、ヘアサロンやスポーツジム等、屋内で人と接する事業は営業停止が命じられています。
屋外でのランニングや犬の散歩等は認められていますが、人との距離を約1.8m取るよう義務付けられおり、人数を問わず複数人の集まりは禁止されています。
市内では警察が巡回し、屋外で複数人の集まりが見られた場合は解散を命じています。今のところ違反者への罰金は科されていませんが、市は今後500ドル(約5万4千円)の罰金を検討しています。
連邦政府は、3月13日に国家非常事態宣言を発動し、現在はカナダとメキシコの国境を一時閉鎖、中国、イラン、欧州、イギリス、アイルランドからの入国を禁止しています。
国民に対しては、海外渡航を中止するよう勧告しており、16日からは「15日間ガイドライン」として、可能な限り在宅勤務・教育する、体調が悪い時は自宅待機する、10人以上の集まりを控える、レストラン等での飲食を控えて持ち帰りや宅配を利用する、高齢者は自宅待機して人との接触を避ける、高齢者養護施設や介護施設を訪問しない等の活動自粛を要請しています。
世代間の格差
感染が広がるにつれ、様々な問題が露呈しています。
最初に問題になったのは、世代間の意識格差です。
新型コロナウィルスによるリスクは年齢により大きく異なっています。CDCが2月12日~3月16日分の国内感染者のデータを分析したところ、65歳以上のリスクが非常に高く、死亡したケースの80%、集中治療室を利用したケースの53%、入院したケースの45%を占めており、中でも85歳以上のリスクが最も高いとしています。
致死率も85歳以上が最も高く10.4%、次いで75~84歳が4.3%、74~65歳は2.7%、64~55歳は1.4%、54~20歳は1%未満、19歳以下の死者はゼロという結果が出ています。
そのため、高齢者の不安が非常に強い一方、若年層の警戒心が低く、特に初期の頃に配慮のない行動が目立ちました。
連邦政府が15日ガイドラインを発行した後も、大学生らの春休みの旅行客でフロリダのビーチが賑わう様子がメディアで報じられ、連邦・各州政府は若年層の協力を強く促し、若くても発症することや症状が出る前に人に移す可能性があること等を強調しました。食料品店は、シニア専用時間を設定して高齢者に配慮するようになりました。
フロリダ州はその後、政府の対応の遅れも手伝い感染が拡大し、現在感染者は4千人を超え、外出禁止令が出されています。
憂慮される医療体制
医療体制に関しては、全米で医療用マスク等の保護具や人口呼吸器が不足しており、医療従事者がマスクを使い回す等のリスクを負っています。
ニューヨーク州では、数週間後に感染のピークを迎え、14万床のベッドが必要になると予想されています。
連邦政府の支援により、州は市内のコンベンションセンターを千床の臨時病院に転換し、同じく千床の臨時病院を7つ建設中、千床の海軍病院船が入港する等増床に努めていますが、必要な11万床には程遠い数値です。
連邦政府は、戦時中の法を適用して自動車メーカーのゼネラルモーターズ社やフォード社に人工呼吸器の生産を命じていますが、急速な感染拡大ペースに生産が間に合う算段はなく、同州では二人の患者で一つの呼吸器を使う試みを開始しています。
医療用品の不足に関しては、知事が数々のメディアに出演して支援を仰ぎ、大手企業や非営利団体から多くの物資の寄付を得ています。
医師不足に関しては、引退した医師や医学生ら62,000人がボランティアに登録しており、これら医師のために複数のホテルが無償宿泊を、航空会社が無償送迎を提供するなど、企業や個人の協力の下、非常事態に取り組んでいます。
市民の状況
ニューヨーク州の人口は1,950万人、ニューヨーク市は860万人ですから、今のところ、感染していない、あるいは症状がないか軽微で検査を受けていない人が圧倒的多数ですが、健康な人々の間で大きなパニックが生じることはなく、皆冷静に行動しているように見受けられます。
CDCは2月後半時点で感染拡大は避けられないとの見解を示し、企業経営者に準備を呼び掛けていましたし、ニューヨーク州知事も初期の段階で、検査数を増やす以上、感染者数が増えるのは当然とし、恐れず冷静に事実と向き合うよう市民にメッセージを伝えていました。事実を伝え、社会全体で見えない敵と戦おうと支援を仰ぐ政府の姿勢が、市民の不安を和らげているのかもしれません。
また、禁止による市民のストレスが懸念されていますが、多くの人はランニングや散歩等の個人でできるエクササイズで気晴らしをしています。州はメンタルヘルス相談電話窓口を設置し、1万人以上のボランティアが応対しています。
先行きが見えない中、市民は経済的な不安を抱えています。
食品小売等は特需で潤い、社員にボーナスを支給する企業がある一方、生活に不可欠でない事業は営業停止を余儀なくされています。どの業種が「不可欠」に該当するのかは各州の定義によりますが、在宅勤務が難しい業種は概ね自主的に営業を停止しているようです。これにより多くの人が職を失い、失業保険の申請件数が全米で過去最高を記録しています。
弱者への支援
影響が大きい中小企業や中低所得層の支援に関しては、様々な策が講じられています。
連邦議会は3月27日にコロナウイルス対策関連法を可決し、個人向けの現金給付や失業保険の給付拡充、中小企業支援等に2兆2千億ドル(約237兆円)を拠出することが決まりました。
個人向けの給付額は所得により異なり、年収7万5千ドル(約809万円)未満の大人1人につき1,200ドル(約13万円)、子供500ドル(約5万4千円)、年収が7万5千ドルを上回る場合は減額され、9万9千ドル(約1,070万円)以上は支給なしとされています。
中小企業向けには、緊急運転資金として一社最大1万ドル(約108万円)の補助金、一社最大1千万ドル(約10億8千万ドル)の融資等を提供しています。
ニューヨーク市も売上が減少した小規模企業に対して、無金利ローンや従業員の給与補助を提供しています。また、必要不可欠な業務に従事する共働き家庭や、経済的な理由で子供の食事を学校給食に頼らざるを得ない家庭のため、学校閉鎖中も持ち帰り用の朝・昼・夕食を無償で提供しています。市はこのプログラムを大人に拡充することや、家賃統制住宅に対する家賃の支払猶予策等、更なる対策を検討しています。
ニューヨーク州も、住宅・商業施設の立ち退きを90日間猶予する行政命令を出しており、多くの非営利団体は、買い物に行けない高齢者や食事に困っている人のために無償で食品を提供しています。
日本では感染が拡大する国々の厳しい医療現場の様子が主に報道されているかと思われますが、多くの一般の人々はそれほど凄惨な状況でありません。
未曾有の事態に市民は不安を抱えていますが、起こっている現実を受け入れ、各自ができることをするしかありません。食べる物に困れば、何かしらの支援が得られる体制が整っています。人々は悲観的になることなく、誰かを責めることなく、粛々と日々を過ごしているように見受けられます。
ニューヨークではこれまで、同時多発テロや大規模停電、ハリケーン等、様々な大惨事を経験し、災害時に助け合いながら乗り越える術を知っているのでしょう。
既に感染は全米に広がっており、ニューオリンズ、デトロイト、シカゴ等では感染者が急増しています。
日本でも今後感染が広がる可能性がありますが、先行する海外の良い例を取り入れ、悪い例を排除し、日本独自の方法を構築して乗り越えていくしかないでしょう。その際、各人が、日本中、世界中で同じような状況が起こっている、同じような状況にこれからなる、そして必ず終わりが来るということを念頭に置くと、人にやさしく、冷静に対処できるのかもしれません。
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March 30, 2020 at 07:02AM
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