赤字は続くが規模は拡大方向に
チャット形式のミニブログサービス「ツイッター」を運営するツイッター社の、2020年第3四半期における四半期決算短信が発表された。その公開資料からお財布事情を確認する。
最初に示すのは年単位での売上や営業利益率の推移。「営業利益率」とは「売上高営業利益率」のこと。売上と営業利益の関係を示しており、「総売上で営業損益を割る」ことで算出される。この値は「本業の稼ぎにおける効率のよさ・悪さ」を示しており、高いほど本業が効率よく稼げていることを意味する。もちろんマイナスならば本業は赤字。
グラフの動向からも分かるように、売上高は増加する一方、営業利益率はマイナス圏を推移、つまりツイッター社は本業の上では赤字を示し続けているままだった。しかし2018年では総売上と営業利益率ともにプラスとなり、初めて通期での最終利益を出すこととなった(営業利益率のプラス転換は2017年が初めて)。そして直近の2019年では引き続き営業利益率はプラス(前年からやや値は落としたが)、最終利益もプラスを示す形となった。
累積赤字(Accumulated deficit)は2019年12月末時点では無くなり、諸表の表記も内部留保(Retained earnings)に差し替わっていたが、今四半期では前四半期から続く形で累積赤字となり、その額面は13億4778万5000ドル(約1409億円、1ドル104.54円で計算)となっている。無論グラフの動きを見れば分かる通り、売上は上昇し続けており、2017年以降は営業利益(本業の稼ぎ)がプラスを示し、2018年以降は最終損益でもプラスを出し続けている。上場で得た資金を用いて各種投資をした上で、さらなる規模の拡大と収益改善を図る目論見が、ようやく実を結んできたようだ。収益構造の改善模索は最近の四半期決算短信資料で繰り返し語られており、それが数字となって表れた形ではある。
各種営業指標をグラフで確認
続いて「総売上」「売上原価」「営業費用」「営業損益」「純損益」の推移もグラフ化する。10年分のみだが、それなりに同社の動向が把握できる。
「総売上」と「売上原価」の差、つまり「粗利」はそれなりに大きなものになりつつあるが、「営業費用」がかさんでいることもあり、「営業損益」、そして「純損益」がマイナスに落ち込んでしまっていたのが分かる(「営業損益」「純損益」にはあまり差異が無いため、一部グラフ上で被ってしまっている)。
直近の2019年では「総売上」は大きく伸びたが、「営業費用」(「売上原価」に各種販管費を足したもの)の増加も大きく、収益構造はやや悪化し「営業損益」はいくぶん減少、一方で「純損益」は勢いこそ弱まったものの引き続き増加を示し、プラスを維持する形となった。
ちなみにツイッター社では現時点で売上を「広告費」と「データライセンス代(など)」の2つで上げている。ツイッターの利用者の増加、中でもモバイル経由の利用者の急増に伴い広告売上も増加し、2019年時点では総売上の8割後半が広告費で占められている。
今後はスマートフォンやタブレット型端末などのモバイル系を中心に、ツイッターのデータをマーケティングなどに活用する企業などが増えてくることから、データライセンス代の売上は堅調な伸びを示していくと考えられる。そしてそれ以上に利用者、特にモバイル経由の利用者が増加し、既存利用者の利用密度が高まることから、広告売上も増していくのは間違いない。
ツイッターが広告依存型のビジネスモデルで成り立っていること、売上が上昇の一途をたどっていることに違いはなく、成長が続いているのが分かる。ただし広告ビジネスは既存のサービスでもその多くで頭打ち、行き詰まりを見せていることもあり、それ一本に限らない収益構造を構築する必要があることは言うまでも無い。データライセンスがその一つだが、それだけではなく、インフラ的な立場にあるツイッターだからこそできる付加価値、機能の添付の模索も求められよう。
報告書では特記事項として「日本は(アメリカ合衆国に続き)2番目に大きな市場。ツイッターの日本における直近四半期の売上は1億3200万ドルで、前年同期比では3%の増加(前期は前年同期比ではマイナス19%であったにもかかわらず)」とし、日本におけるツイッターの位置づけが財務面でも無視できない実情にあることを記している。
またCFO(最高財務責任者)のNed Segal氏は報告書の中で「(直近四半期では)イベントの復活や遅延していた商品の発売により、広告出稿が大きな増加を示し、利用者へのアプローチも積極的なものとなった。結果として広告収入は前年比14%増の9億3600万ドルとなった。広告フォーマットの更新や予測の改善など、広告利用者への提示資料の品質の改善も行われている」などと言及している。
上場を果たしたものの、利益を得られる構造の構築に難儀し、続々登場する新規競合サービスとの争いの中で苦戦を強いられていることは否めないツイッター社。利用者の注力を維持しつつ、自社サービスの特性を活かして安定した収益モデルを確保し、どのような姿に変貌していくのか、あるいはスタイルを維持し進化していくか。その動向を見守りたい。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。
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November 02, 2020 at 07:07AM
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