辞書が大好きなアイドル・乃木坂46の鈴木絢音さんと、「辞書の神様の生まれ変わり」と評される辞書編纂者・飯間浩明先生の異色の対談が実現しました。『新明解国語辞典 第八版』と、鈴木さんのファースト写真集『光の角度』の発売がともに2020年11月だったという縁から生まれたこの対談。前半では辞書が大好きなお二人が、どんなふうに辞書を愉しんでいるのか、伺いました。(構成・文/森本裕美)
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「インフルエンサー」を辞書に載せたきっかけは乃木坂46
飯間 『三省堂国語辞典』を作っている飯間と申します。今日は実は、鈴木さんにお会いするのを楽しみにしてきました。私はそんなに音楽はわからないんですけれども、音楽の言葉に興味がありまして。
鈴木 そうなんですか?
飯間 特に「紅白歌合戦」は筋金入りのファンで、大学の時から毎年録画してるんです。だから当然、乃木坂46さんの……、乃木坂46さんと言うと変かな。初出場の時からずっと見ています。しかも、歌を聴きながら「あ、これ面白いな」と思った言葉は全部記録しています。
鈴木 初出場のときからですか、ありがとうございます!
飯間 一番印象深かったのは、2017年に『インフルエンサー』っていうすごいヒット曲がありますよね。
鈴木 はい。乃木坂46の17枚目のシングルです。
飯間 当時、インフルエンサーっていう言葉がパーッと広まった。これはもう辞書に載ってもいいと思いました。三省堂の辞書に載せたい言葉を選ぶイベントで、「インフルエンサー」を2位に選んだことがあります。きっかけはこの歌でした。
鈴木 まさか乃木坂46がきっかけになるなんて! そうなんですね。
飯間 もちろん、すでに使われている言葉でしたけど、それが乃木坂46の歌にもなっている。だったら、これはもう辞書に載せなければと思ったんです。話がオタクっぽくなりますが、もう1曲挙げると、『君の名は希望』という歌がありますよね。
鈴木 はい、乃木坂46の5枚目のシングルです。
飯間 その歌詞に、「去年の6月 夏の服に着替えた頃」とあるでしょう。そこで、乃木坂46は「きがえた」と歌っていますね。
鈴木 確かにそう歌っていますが、どういうことでしょう。
飯間 何が言いたいかというと、洋服を替えることを「きがえる」と言う人もいれば、「きかえる」と言う人もいるんです。
鈴木 あ! 言われてみれば、たしかにそうですね。
飯間 乃木坂46の歌からすると、若い人たちはもう「きがえる」と言うんだなと思いました。では、辞書はどうなっているか。ちょっと『新明解国語辞典』を引いてみましょうか。
鈴木 はい、引いてみますね……。「着替える(きかえる)」になっています!
飯間 『新明解』だと、にごらないんですよ。でも、読んでいくと「『着がえる』とも」と書いてある。だからどっちでもいいんですけれども、新明解としては「着替える(きかえる)」なんです。我々の作る『三省堂国語辞典』は、できるだけ現代的にしたいので、「どうだろうなぁ、乃木坂が歌っているとおり、着替える(きがえる)にしようかな」なんて思う。そうやってけっこう、乃木坂46を基準にしてるところがあるんです。
鈴木 それを伺うと、嬉しいような、ちょっと責任重大なような気もしますね(笑)。
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