東京五輪・パラリンピック組織委員会理事で元電通専務の高橋治之氏(77)が、読売新聞オンラインのインタビューに応じた。約1年5か月前、近代五輪で初めてとなる「1年延期」を、日本側から最初に発信したのが高橋氏だ。五輪が閉幕した今、発言の狙いと真意を打ち明ける。「東京大会を中止させないために、アメリカ大統領に影響力のありそうなメディアを通じて発言させてもらった」(聞き手・込山駿)
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて当初予定から1年延期された東京五輪は2021年7月23日から8月8日まで、ほぼ全面無観客で開催された。電通時代からスポーツビジネスに深く関わり、東京五輪にも招致活動から携わってきた高橋氏は8月中旬、都内のオフィスで、ひとまず胸をなで下ろした。
「オリンピックの自国開催を実現できてよかった。無観客になったのは残念だけれども、金メダルをたくさん取って日本中がテレビ観戦で盛り上がった。世界の人たちも『日本がアスリートを救ってくれた』と喜んでいる。この後のパラリンピック(8月24日~9月5日)を無事に開催するためにも、まずは五輪が中止にならなくてよかった」
東京五輪は中止されないが、2年あるいは1年延期することは最も現実的な選択肢になっている――。そんな高橋氏の発言内容を含むインタビューは2020年3月10日、米国の経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」の電子版に掲載された。
前年末に中国で発生した新型コロナウイルスが世界各地に拡大したため、WHO(世界保健機関)がパンデミック宣言を出したのとほぼ同時で、日本国内で高校野球の選抜大会中止が決まったのもこの頃だった。ただ、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長はそれまで「東京五輪は当初予定通り、20年7月24日に開幕する」「中止や延期という言葉は出ていない」といった公式コメントを繰り返していた。日本の政府や五輪関係者も、バッハ会長の言葉に沿った内容の情報発信に終始していた。
それだけに、日本側から初めて延期に言及した高橋氏の発言は、世界を駆け巡り、物議を醸した。危機感に駆られて発した言葉だったという。
「欧米のスポーツ界は当時、水面下で東京五輪の中止論に傾き始めていた。海外の友人たちから意見や情報を集めたところ、ヨーロッパでは『2020年の東京五輪と22年の北京冬季五輪を両方とも中止して、コロナ後のオリンピックは24年パリ大会で再開させよう』という声が上がっていた。夏季五輪の開催地は24年パリと28年ロサンゼルスまで決まっていたから『東京には32年大会へ回ってもらう』という案まで浮上していた。20年夏の開催に向けて長年準備を進めてきたのに、『32年』なんてとんでもない話だ。IOCは欧州出身の理事が多くて、発言力が強い組織になっている。東京五輪が欧州からの中止論にのみ込まれてしまいかねない状況だった。それを、僕は一番恐れた」
「欧州の中止論を食い止めるには、それが表面化する前に、日本側から大会の『延期』を発信して先手を打つ必要があると判断した。では、僕が延期論を発信するうえで、最もIOCへの大きな影響力を期待できる方法は何だろうか。そこで、WSJのインタビューに答えることにした」
からの記事と詳細 ( 東京オリンピックの「延期」を言い出した男の告白「アメリカ大統領への影響力がありそうなメディアに発言した」 - 読売新聞 )
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