長崎県佐世保市の佐世保郵便局で配達員全74人が新型コロナウイルスの感染者か濃厚接触者となり、大規模な配達遅延を起こした問題は、配達員が郵便かばんや携帯端末機などを共同で使用していたのが原因とみられることが、調査を行った同市保健所への取材で分かった。マスク着用や消毒液の配置など基本的な対策はされていたが、共用物への対応までは徹底されていなかった。(林尭志)
市中心部の約2万8000世帯を管轄する同局で、配達員2人の感染が最初に確認されたのは今月3日だった。その後、陽性報告が相次ぎ、市保健所は局内でのクラスター(感染集団)と認定。感染者は10日までに配達員12人と事務員2人の計14人にまで膨らんだ。
市保健所は6日、医師や保健師らによる立ち入り調査を実施。局員約180人は全員がマスクを着用して業務にあたり、局内には消毒液も複数あった。食事をする際に使う休憩室はパーティションで仕切られ、くしゃみなどを介した「
市保健所は感染者の中に、勤務日が重ならない人がいる点に着目。ローテーション職場で、同じ物に触れることで起きる「接触感染」が感染拡大につながったとの見方を強めた。
配達員たちに個別の机はなく、郵便物の仕分け作業を行う際は交代で使用。郵便物を入れるかばんや配達の状況を記録する携帯端末機など、配達の際に持ち出す道具を共用していたことが分かった。同局では共用物を使用する際、消毒などの徹底は指示していたが、手順などルールまではつくっていなかった。
米国立衛生研究所(NIH)などの研究では、コロナウイルスの残存時間は布の表面で48時間、プラスチックで72時間とされる。市保健所は「全配達員がウイルスに直接触れた可能性を否定できない」とし、PCR検査で陰性だった配達員も濃厚接触者と特定し、自宅待機を要請した。
新型コロナの影響で郵便局の配達員全員が配達できなくなったのは全国初だ。市保健所幹部は「配達が止まることは想像できた。だが、感染力の強いデルタ株が増えており市民に感染が広がるのは避ける必要があった」と強調。日本郵便九州支社(熊本市)は「共用部の消毒などは指導していたが、結果的に不十分だったことは否定できず、保健所の指導に従った」と説明する。
21日には自宅待機などしていた配達員の大半が勤務復帰になった。最初の感染者の判明から3週間近く。この間、人手不足で未配達となった郵便物は最大で約12万8000通に達した。県内外の郵便局などから約100人が応援に入るなどし、未配達は22日にも解消される見通しとなった。
同局は再発防止策として換気を強化するためサーキュレーターを増やし、向かい合わないなど机の配置も変更した。共用物品について、使用前の消毒の徹底が指示された。同支社関係者は「これほど影響が広がるのは想定外だったが、基本に立ち返り、感染防止を図っていくほかない」と話す。
感染症対策に詳しい舘田一博・東邦大教授は「共有物を使用する際は、各自が気をつけ、消毒など基本的な対策を繰り返すしかない。徹底しても感染者が出た際は、直ちに同僚の抗原検査や自宅待機を進めるなど、職場全体で感染拡大防止を図る必要がある」と話す。
配達遅延は市民生活にも影響が出ている。市中心部の商店街にある「バッグショップタケモト」には10日の消印が押された封書が16日になって届いた。普段は翌日に届くという。郵便物には仕入れ先の請求書もあり、社長(71)は「支払い漏れがあれば信用に関わる」と語った。
市戸籍住民窓口課には、住民票や戸籍謄本などの郵送請求が週に800~900通ほど届くが、「住民票が届かない」との問い合わせが相次いだ。市職員は勤務時間外での請求書類の発行や近隣郵便局での書類発送などを余儀なくされており、業務への支障を防ぐのに必死だ。
からの記事と詳細 ( 郵便局クラスター、配達かばん・端末の共有が原因か…消毒手順のルールなし - 読売新聞 )
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