毎日3食の家ごはんを作る際に、きちんと分量を計る人は、そうはいないはず。適当にささっと作るのが、ふだんのごはんだろう。
それこそが、僕たち日本人が食べてきた和食だと思っている。
ずっと和食と向き合っている料理人の僕ですら、そのくらいのぼんやりした定義しか言えない。でも、それでいいのではないか。
要は、和食は〝いつものごはん〞ということだ。
レシピに頼りすぎていないか?
これまで、たくさん料理本を出している僕が言うのはおかしな感じがするが、材料、分量、手順が教科書のようにきちんと記されているレシピを、その通りに作ろうとするのは悪いことではない。まずはレシピ通りに作ってみるのもいいだろう。
でも、そうやって作ったごはんは、いつも食べているごはんとはかけ離れているというか……幻想だという気もする。
というのは、うちの祖母が味噌汁を作るとき、お茶碗に入れた水を人数分、鍋に入れていたからだ。ふだんの食事作りなのだから、そのぐらい大雑把で十分だった。
僕は料理教室でもたまに教えているのだが、レシピに「5ミリ幅で切る」と書かれていると、きっちりその通りに切ろうとする方がいらっしゃる。そんなふうにレシピにとらわれすぎるのはよくない。
なぜなら、レシピの情報に頼りすぎて、本当ならとてもシンプルに作れるはずの料理が、どんどんややこしくなってしまうからだ。レシピがなくても作れるもの、それが和食なのだと思ってほしい。
(消しゴムはんこイラスト・とみこはん)
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