政府は3日、高齢ドライバーへの実車試験の新設や「あおり運転」の厳罰化を柱とする道路交通法改正案を閣議決定した。運転免許更新時に実車試験を義務づける対象は一定の違反歴がある75歳以上とした。また、あおり運転を法律に初めて規定し、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」とする罰則を設ける。【佐々木洋】
◇「サポカー限定免許」を創設
法案が通常国会で成立すれば、高齢者への実車試験は2022年にも導入され、あおり運転の厳罰化は今年夏前にも始まる。
警察庁は重大事故が相次ぐ高齢ドライバー対策として、実車試験の導入方針を明らかにしていた。対象年齢の区切りを「80歳以上」とすることも検討したが、認知機能検査の対象年齢に合わせて「75歳以上」とした。年代別の事故率も考慮した。
法案は、一定の違反歴がある75歳以上のドライバーに免許更新時の実車試験を義務づける。違反歴は、大幅な速度超過や信号無視などを想定する。試験で技能が不十分とされれば更新できないが、免許更新期間の満了日前6カ月以内なら繰り返し受けられるようにする。
法改正に伴い、70歳以上に行っている高齢者講習の実車指導でも運転技能を評価し、結果を本人に通知する制度を始める。免許取り消しにはつながらないが、技能を自覚してもらう狙いがある。
自動ブレーキなどが付いた安全運転サポート車(サポカー)に限って運転できる「サポカー限定免許」も新たに創設される。サポカーの定義は今後定める。
◇「著しい危険」で「5年以下の懲役、100万円以下の罰金」
一方、これまで法律に位置づけていなかったあおり運転は、「他の車の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせる恐れのある行為」と規定した。前方の車への著しい接近や、急な進路変更などを執拗(しつよう)に繰り返し行った場合が対象となる。
罰則は、あおり運転を巡る事件に適用している刑法の暴行罪(2年以下の懲役など)や威力業務妨害罪(3年以下の懲役など)とのバランスを図った。高速道路で他の車を停車させるなど「著しい交通の危険」を生じさせた場合は、さらに重い「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」とした。
行政処分も見直し、あおり運転として摘発されると、即免許取り消しとする。免許を再取得できない欠格期間は2〜3年程度となる見通し。
法案には、バスやタクシーの運転に必要な2種免許の受験資格の緩和も盛り込まれた。新たな教習カリキュラムの修了を条件に、年齢要件を「21歳以上」から「19歳以上」に、経験年数要件を普通免許保有「3年以上」から「1年以上」に改める。ドライバー不足の解消が目的で、22年の施行を目指す。
◇道交法改正案の主なポイント
<高齢ドライバー対策>
・一定の違反歴がある75歳以上を対象に免許更新時の実車試験を義務づけ→基準に満たなければ免許失効
・運転できる車を安全運転サポート車に限定した「サポカー限定免許」を創設
<あおり運転対策>
・道交法にあおり運転の規定を新設
・罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金など
・違反1回で免許即取り消し
◇あおり運転となる主な違反行為
・不必要な急ブレーキ
・前方の車に著しく接近
・急な進路変更
・左側からの追い越し
・執拗なクラクション、パッシング
・幅寄せや蛇行運転
・高速道路での最低速度違反、駐停車違反など
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March 03, 2020 at 07:12AM
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