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Tuesday, February 2, 2021

「何をしても同じ…」悩み続けていた有村架純、吹っ切れたのは「先輩のある一言」から - 読売新聞

bantengkabar.blogspot.com

 デビューから10年を超え、輝きを増す有村架純さん。キャリアを重ねてもなお失われない純粋さや素朴さで、血の通ったリアルな女性像を表現する稀有けうな存在です。菅田将暉さんとダブル主演した映画「花束みたいな恋をした」(1月29日公開)のヒロイン役は、そんな有村さんの真骨頂。今、ラブストーリーを世に送り出す意味を語り、もがいた20代を振り返る言葉は、誠実で温かでした。(山田恵美)

 22歳で映画「ストロボ・エッジ」に出演したとき、新進女優として本欄(夕刊popstyle)に初登場した。紙面を見て、「わぁ、覚えてます。懐かしい……」と声を上げる。あれから6年。当時のキラキラしたかわいらしさは、つややかな美しさへと深化した。

 映画「花束みたいな恋をした」が描くのは、2015年に21歳で出会った大学生男女の、5年にわたる恋の行方。ヒロインは、有村さんと同世代なのだ。

 監督は、「映画 ビリギャル」でもタッグを組んだ土井裕泰さん。当初から有村さんと菅田さんを主演に想定し、「等身大のリアルなラブストーリー」を目指した。劇的な展開はない。2人が向き合うのは、就職や結婚。だからこそ、誰の胸にも響く。

 「濃密な時間を過ごす恋人同士を演じたのは、今回が初めてなんです」と有村さん。「相手が先生(映画『ナラタージュ』)だったり、生徒(ドラマ『中学聖日記』)だったり。片思い(映画『ストロボ・エッジ』)とか、すれ違ってばかり(ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』)とか。そんな恋愛が多くて」と、いたずらっぽく笑う。

 好きな映画や本や漫画がことごとく一致した2人は、あっという間に恋に落ちる。「ありますよね、そういう始まり。ごく普通の恋愛なので、役者としては悩みました。役にどう色をつけていったらいいか」。意識したのは、「頭のてっぺんからつま先まで感情を巡らせる」こと。それだけだ。

 感情のメーターが振り切れたのが、クライマックスのある場面。土井監督から「泣かないで」と念を押されていたが、目の前でボロ泣きする菅田さんを見ていると、せきを切ったように涙があふれた。結果的に、役を生きる、有村さんらしい名場面になっている。

 恋愛とは、何だろうか。「人と人が歩み寄り、認め合う。わかり合おうとする。誰の人生においても必要なこと」と話し、続けた。「人を愛し、心や肉体でつながることは、(コロナ禍の)今だからこそ、しみじみと貴いものだと感じます。はかないけど、美しいって」

 幼いときから、映画やドラマが好きだった。「宮藤官九郎さん脚本の『木更津キャッツアイ』とか、夢中で見てました。友達と、古田新太さんが演じる『オジー』のまねをしたりして」

 学園ものなどで、志田未来さんら同世代が「物語の中」で活躍するのを見て、不思議な気持ちになった。私にもできるかな? 私なら、どう演じるだろう。

 17歳でデビュー。まもなく、その日できたこと、できなかったことなどを毎日ノートに書きつづるようになった。作品や役柄についても、自分の言葉でまとめてみる。言われるがままに演技するのではなく、考えて役を作り上げられるようになりたい――。そんな向上心からだ。

 生真面目な性格から、今も習慣になっている。「どんな作品なのか、何を表現すべきか。この女性はどんなふうに生きて来たのかなって、想像を巡らせて」。10冊以上あった過去のノートは、半分捨ててしまったという。「人に言えない悩みなども、吐き出していたので。『こんなの持っていても!』って」

 10年の道のりは、決して順風満帆ではなかった。振り返れば「悩んでばかり」と苦笑する。出演作が積み重なっていく一方で、「清純派」としてけなげな役ばかり続き、「何をしても同じじゃないか」。焦燥感が募った。

 吹っ切れたのは、先輩のある一言だという。「今来た役は、今しかできない。やるんだったらやり切った方がいいよ。焦る必要なんて、全然ないし」。率直なアドバイスに、ハッとしたと話す。

 「『同じ役ばかり』だなんて、何を文句言っていたんだろう、と。一つ一つが貴重な経験なのに。30代、40代になってから『戻りたい』と思ったって、もう出来ない役なんですよね」

 フィクションの世界に飛び込んだ10代の頃の、「お芝居が好き」という真っさらな思いを再びかみ締めている。「私自身は、大きく気持ちが動くことはあんまりなくて、いつもフラットなんです。役になると、怒ったり泣いたり、笑ったり悲しんだり」。人生が色づき、豊かになっていくのを感じる。

 「20代で出会える役を全て、ちゃんとやりきる。その先には、何があるのかな。まだ未知数です」。夢見るようにほほ笑んだ。

 2015年、冬の東京。大学生の八谷絹はちやきぬ(有村架純)と山音麦やまねむぎ(菅田将暉)は、終電に乗り遅れた京王線の明大前駅で出会う。時間を潰すために入った居酒屋で話すうち、好きな音楽や映画、読んでいる本が同じだとわかり、親密に。多摩川沿いのマンションで、一緒に暮らし始める。

 ドラマ「カルテット」の脚本と演出を担当した坂元裕二と土井裕泰による、「忘れられない5年間」のストーリー。絹と麦が頻繁に口にするミュージシャンや作家は、全て実在する。「よく知らない人のインスタグラムを見て、そこで話題にしている固有名詞などをリサーチした」と坂元。リアリティーあふれる物語が魅力的だ。きのこ帝国、Awesome City Club、フレンズの楽曲が印象的に使われている。

 有村さんが「忘れられない」ラブストーリーは? 三つのジャンルで薦めてくれました。

 「流浪の月」(凪良ゆう著)――全国の書店員の投票で選ばれる「2020年本屋大賞」受賞作。誘拐事件の「被害者」とされた少女と、「加害者」として断罪された青年が15年後に再会する。「ラブストーリーじゃないんでしょうね。恋人でも家族でも、友達でもない。だけどわかり合える特別な存在の2人。心をつかまれて、1日で読み切りました」

 「私の頭の中の消しゴム」(イ・ジェハン監督)――若年性アルツハイマーを発病した妻と、彼女を見守る夫の純愛。「どうにもならない運命の悲しさに、『こんなに?』ってびっくりするぐらいボロボロに泣きました。切ないセリフや演出も素晴らしいんですが、『私だったらどうしよう』って、すごく感情移入して見ちゃいました」

 「First Love」(宇多田ヒカル)――デビュー曲「Automatic」などを含む初アルバム。宇多田は当時16歳。「アルバム表題曲の『First Love』は、いつ聴いても、哀愁を帯びたメロディーと、少し背伸びした歌詞がすてきだなぁと思いますね。家族で出かけた車の中などでよく流していたのを覚えています」

     ◇

 ありむら・かすみ 1993年2月13日生まれ。兵庫県出身。2013年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で一躍人気となる。主な出演作は、ドラマ「ひよっこ」、映画「3月のライオン」など。「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」が、それぞれ4月23日、6月4日から2作連続で公開される。

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